前の記事で NiceHash QuickMiner でのオーバークロック設定は「ワンクリック最適化がおすすめ」と紹介しました。
では、なぜ「結局ワンクリック最適化がおすすめ」なのか。その理由を見ていきましょう。
マイニングにおけるオーバークロックの考え方
NiceHash QuickMiner では、「ワンクリック最適化」を行わない場合は「OCTune」機能を使ってオーバークロックを行います。NiceHash でも解説されていますが、「OCTune」がどのようなものなのか紹介します。まずは設定画面に入ってみましょう。
右下のシステムトレイで NiceHash QuickMiner を右クリックし、「OCTune」をクリックします。そうするとこのような表のある画面が表示されます。
マイニングでのオーバークロックは、「Min KT」と「Avg KT」の値を小さくすることが目標になります。ここで言う「KT」とは「Kernel Time(カーネルタイム)」のことで、GPU上で動作するコードの実行にかかる時間をマイクロ秒単位で表したものです。
- Avg KT= 平均所要時間
- Min KT= 最小所要時間(Avg KTの半分程の外れ値になることがあります)
これらの値が小さくなると、コードの実行にかかる時間が短くなり、1秒間に処理できる計算が多くなるため、ハッシュレートが高まることになります。
メモリクロックの調整
オーバークロックは、消費電力を減らしてメモリクロックを高くする方向で行うため、そもそも設定できるメモリクロックの上限を知っておく必要があります。そのために、コアクロックを -600 に、Power limit を GPU の TDP に設定し、メモリクロックを少しずつ上げていくことで最高値を探っていきます。
メモリクロックを 25 上げて、「HW ok」が3回出たらまたメモリクロックを 25 上げる、、、という調整を「HW err」が出るようになるまで繰り返します。「HW err」が出たら、そのときのメモリクロック – 25 が、その GPU のメモリクロックの上限値となります。
電力制限の調整
コアクロックを -600 に、メモリクロックを上限値以下の適当な値に設定したら、Power limit の値を少しずつ減らしていきます。徐々に減らしていくと、ある値を下回ったところから「Min KT」と「Avg KT」の値が上昇し始めます。こうなったら Power limit の調整をやめて、コアクロックの調整に移ります。
コアクロックの調整
メモリクロックの調整と電力制限の調整を済ませた状態で、コアクロックを 25 ずつ増やしながら、「Min KT」と「Avg KT」の値を下げていきます。コアクロックを上げていくとメモリの安定性が下がり、「HW err」の値が上がったり「rejected share」が出てくることがあります。そのときにはメモリクロックを下げると安定性が上がることがあります。
最適なコアクロックが見つかったら、再度メモリクロックの調整と電力制限の調整を行ってください。メモリクロックの調整、電力制限の調整、コアクロックの調整を繰り返し、最適な値を探っていきます。
最適な値が見つかったら「Save Current Configuration」をクリックすると、そのときのオーバークロック設定を保存できます。保存した設定は、次回の Excavator 起動時に自動的に読み込まれます。
第1回のまとめ
このように、最適なオーバークロック設定を手動で探すのはなかなか骨の折れる作業ではありますが、一度チャレンジしてみるのがおすすめです。「Avg KT」の調整などを実際にやってみることで、どういう理屈でハッシュレートが増えるのかといった、マイニングへの理解が深まります。
「OCTune」には他にも、「alternative overclocking」という別の手動オーバークロック方法があります。
OCTune 設定方法のまとめ
OCTune 設定方法は別の記事で紹介してきました。
こちらもあわせてご覧ください。
【本ページ】第1回では、OCTune の基本を紹介しています。
第2回では、OCTune でのオーバークロック設定を半自動で行う「オルタナティブオーバークロック (Alternative Ooverclocking) 」設定を紹介しています。
第3回では、OCTune でのオーバークロック設定をほぼ自動で行う「自動オーバークロック (Autotune) 」設定を紹介しています。
第4回では、リモートアクセスを設定することで、1台の PC から他のリグの OCTune を行えるようにする方法を紹介しています。
第5回では、「ETHlargementPill」なしでハッシュレートを向上させる新機能と、その使い方を紹介しています。
第6回では、「Fan management」の使い方を紹介しています。
第7回では、「新ファンモード」の使い方を紹介しています。